Global Appeal 2022

Dialogue

第17回目となるグローバル・アピールでは、WHOハンセン病制圧大使と日本財団会長を 務める笹川陽平氏がCII 財団代表のジャムシェード・ゴドレジ氏と「ハンセン病を忘れな い」社会を実現するためにフィランソロピー財団がなすべきことについて対談します。

ジャムシェッド・N・ゴドレジ氏

ジャムシェード N ゴドレジ氏はGodrej & Boyce Manufacturing Company Limitedの会長を務める。Godrejグループは家電、耐久消費財、オフィス設備、工業用品、民生品、消費者サービスを扱う企業。ゴドレジ氏はまた、環境問題に特化したCII Sohrabji Godrej Green Business Centreの会長を務める。2003年4月、インドで民間人に授与される3番目に栄誉あるPadma Bhusanを受賞した。

笹川陽平氏

笹川氏は、1962年に日本の非営利財団として設立され、国内外で支援活動を行う日本財団の会長を務める。
WHO事務局長によってハンセン病制圧大使に任命されて以来、40年間世界のハンセン病の制圧、およびスティグマと差別をなくすための活動を推進している。

私たちは世界の財団とともに、新型コロナウイルス流行の中でハンセン病の問題をを忘れてはならないというメッセージを送ることにしました。
笹川:
世界ハンセン病の日にハンセン病のスティグマと差別の撤廃を訴える「グローバル・アピール」を始めて17回目になります。今回のグローバル・アピールは「コロナ禍でもハンセン病の問題を忘れない」というメッセージを世界の財団と一緒に訴えていきたいと考えています。ゴドレジ会長の協力のもと、CII財団にもグローバル・アピールに賛同いただいたことに改めて感謝申し上げます。
ゴドレジ:
ハンセン病に対する差別と偏見をなくすためのグローバル・アピールに賛同できることを嬉しく思います。CIIが昨年、笹川インドハンセン病財団(S-ILF)と覚書を締結し、インドにおけるハンセン病の制圧とスティグマとの闘いに貢献するため、産業界の活動を推進することになったことは喜ばしいことです。CIIはS-ILFと長年にわたって協力関係を築いてきました。
ハンセン病の問題を解決することは、治療を受けるというだけでなく、社会的・経済的なリハビリテーションも含まれます。ハンセン病患者・回復者が社会・経済・文化に平等な機会を得られるようにするために、S-ILFは第一線で活動しています。CIIは「善のために協力する(collaboration for good)」という理念に基づき、引き続きSILFと連携しつつ、ハンセン病の問題がない社会の実現を目指していきます。
笹川:
タルン・ダース・SILF会長とチャンドラジット・バネルジー・CII事務局長の多大なご尽力により、SILFとCIIの連携が始まり、その関係が一層強化されていることを嬉しく思います。
ハンセン病は個人の健康問題にとどまらず、彼らの家族や地域社会、さらには次世代にも影響を及ぼす病気です。
ゴドレジ:
あなたは幅広い社会問題のパイオニアであり、国境を越えて世界規模でリーダーシップを発揮しています。 数え切れないほどの人生に影響を与えてきたあなたの深いコミットメントと情熱は、私たちの多くにインスピレーションを与えてきました。
笹川:
インドは世界で最もハンセン病の患者数が多い国ではありますが、同時にハンセン病に係る取り組みに最も力を注いでいる国でもあります。例えば、当時不可能と言われていた公衆衛生上の問題としての制圧を2005年に達成し、これは「インドの奇跡」と絶賛されました。多くの国では一旦制圧を達成すると、それ以上の活動が停滞し、患者数は下げ止まる「制圧のトラウマ」に陥りますが、インドでは制圧を達成した後も、アーシャと呼ばれる保健師を中心に更なる患者発見活動を続けています。そして何より、S-ILFのような組織やAPALのような回復者団体がハンセン病の患者、回復者と共に彼らの自立や生活向上に向けた支援を行っています。これらの積極的な活動を更に後押しすべく、インドはモディ首相の力強い指導のもと、2030年までにインドからハンセン病の病気とそれにまつわる差別をゼロにするという野心的な国家目標を掲げ政策としても実行しています。私はこうしたインドの取組みを大変高く評価しております。
ゴドレジ:
インドでは、ここ数十年でハンセン病の患者数は急速に減少していますが、ハンセン病は身体的な症状にとどまらないという事実を改めて認識する必要があります。つまり、ハンセン病に関わる社会的偏見とその精神的な影響についても今後の課題として取り組まなければなりません。ハンセン病は身体的な問題だけでなく、精神的な問題も抱えています。さらに、ハンセン病は本人だけでなく家族全員、さらには次世代にまで影響を及ぼす病気です。
我々は啓発活動、リハビリテーション、社会経済的な統合が、医学的な介入と並行して行われる必要があると認識しています。さらに研究開発にも投資する必要があるでしょう。 これらはすべて、セクターを超えた共同作業によってのみ達成され、産業界の役割はこの動きを推し進めるために不可欠となります。
新型コロナウイルスの流行はとりわけ脆弱な立場にある人々に深刻な影響を及ぼします。
笹川:
おっしゃる通り、ハンセン病は単に健康上の問題だけではなく、病気にかかったという理由だけで社会から排除され、孤立を強いられる病気です。当事者や家族はまさに「取り残されたコミュニティ」の人々と言えます。昨年から流行した新型コロナウイルスは世界中の人々に影響を与えましたが、特に彼らのように立場の弱い人たちが受けた被害は甚大でした。世界中のあらゆる回復者コミュニティの人々が仕事を失い、食べるものがなく、最低限の医療ケアを受けられないという前代未聞の状況が続きました。
ゴドレジ:
インドでは第一波で大多数の人々が生活の糧を失い、家族の収入が激減し、生活の質が低下し、第二波では健康上の大惨事という最悪の状態を経験することになりました。当財団はCIIや関連企業とともに、パンデミックの影響を受けた800万人の人々に救援物資を提供し、可能な限りの支援を行いました。中央および州の政府と緊密に連携し、業界の支援を活用することで、特に、移民労働者、日雇い労働者、高齢者や子供、開発から取り残されたコミュニティ、障害者、少数民族など、恵まれない人々や疎外された人々に支援を届けることができました。
ハンセン病コロニーの人々に対しては、S-ILFチームと協力し、ハリヤナ州、デリー州、アンドラ・プラデシュ州、テランガナ州で困窮する家族に食料品や衛生用品などの救援物資を提供しました。またコロニーの若者が継続して教育を受けられるように、CII会員からのノート型パソコンの寄付を促進しました。
笹川:
私も、引き続きCII財団と共に、ハンセン病患者、回復者の皆さんの生活が少しでも向上するよう心を一つに努力して参ります。ゴドレジ会長が指摘するように、産業界の参画、企業へのアプローチはコロナ禍そしてポストコロナの世界において大変重要となってくるでしょう。日本財団では、Valuable500という団体と協力して、ソニーやマイクロソフト、グーグルといった世界的大企業500社のCEOをメンバーとして迎え入れ、障害者を積極的に雇用する事業を展開しています。コロナ禍そしてポストコロナは多様性が一層尊重される世界にならなければなりません。誰一人取り残されることのない社会の実現に向けて、私たち財団の責任はこれまで以上に大きくなるはずです。この度賛同いただいた世界の財団とはこれからもハンセン病問題の解決のために共に活動できればと期待しています。
インド工業連盟(CII) 1895年に設立。非政府・非営利組織。ビジネス、政治、学術、社会のリーダーと協力し、グローバル、地域、および業界のアジェンダを形成。9000以上のプライベート及びパブリックセクターからの直接メンバーと30万を超える間接メンバーからなる。2020年1月にはCIIとSILFの間でMOUが締結され、インドのハンセン病問題の解決(啓発、CSR促進、雇用問題)に向けて協力することとなった。 もっと見る>
CII財団(CIIF) 2011年に社会的発展とチャリティ活動を実施する団体としてCIIが設立した財団。疎外されたコミュニティとドナー(特に産業セクター)の重要な橋渡しを行うことで、インクルーシブな発展を目指す。教育、女性のエンパワメント、環境問題、災害時の緊急支援などを実施。 もっと見る>